契約締結上の過失とは、契約が成立する前の段階であっても、信義則上の付随義務違反として当該契約に関する責任を負担させるための法理論です。
契約関係を結んでいない当事者間においては、民事上何らかの義務が生じることがないのが原則ではありますが、一定の事情が存在した場合に契約が正式には成立していなかったという一事をもって全て無責任で構わないとすることが妥当でないケースもあり得ることから、例外的に契約に向けた関係自体から一定の責任を発生させる場合があります。
例えば、契約を締結するかのうような態度をとり相手に負担を負わせておきながら、最終的に契約締結を拒絶した者に対し、信義則上の注意義務違反があるとして損害賠償義務を認めた判例(最高裁昭和59年9月18日)などがあります。
法律事務所つくばコム 弁護士 福嶋正洋