原因において自由な行為とは、犯罪の実行行為段階において心神喪失状態であったとしても、その状態を自ら招いたものであるときは、当該犯罪行為について完全な責任を問われるという法理のことをいいます。
刑法は心神喪失者の行為によって生じた犯罪結果につきこれを罰しない旨規定していますが、敢えて自らを心神喪失状態とする事態を招いたような者を保護することは不当であることから、原因において自由な行為という法理が導かれました。
敢えて自らを心神喪失状態とさせて犯罪行為に及ぶということが現実的にありうるかという指摘もありますが、例えば、殺意を持っている相手方を殺すために自ら薬物を注射して心神喪失状態を招き、殺害の結果を生じさせたというような場合が想定されます。