つくコム通信vol.13(配偶者の不倫に関する法的諸問題について)
配偶者の不倫が判明し、慰謝料を請求したいというご相談が増えています。
この点、離婚しない限り不倫相手に慰謝料を請求することができないと考えてらっしゃる方が相当程度いるようですが、離婚したか否かにかかわらず、慰謝料の請求をすることはできます。
今月の「つくコム通信」では、不倫に基づく慰謝料請求の法的根拠や、留意点等について書きたいと思います。
不倫に基づく慰謝料請求の法的根拠
結婚している夫婦には、それぞれに貞操義務や相互扶助義務をはじめとする夫婦関係を円満に続けるための様々な権利・義務があります。
配偶者の不倫行為は貞操義務違反であり、一方の配偶者に対する不法行為(民法709条)ということになります。したがって、権利を侵害された一方の配偶者は、これによって被った精神的な損害を慰謝料として賠償請求することができるのです。
仮に、夫が不倫をしたというような場合、当該不貞行為によって精神的な損害を与えたのは、夫とその浮気相手ということになりますから、妻はこの2人に対し、共同で精神的苦痛を与えられたとして、2人を相手取って慰謝料を請求できます(民法719条・共同不法行為)。
なお、慰謝料請求は、共同不法行為者のうちどちらか一方にのみ請求を行うということも可能です。
仮に不貞があったとしても離婚はしないというような場合、同じ家計内で請求し合ってもあまり意味がありません。そこで、不倫相手に対してだけ請求を行うということになるでしょう。
離婚有無は「請求額」に影響する
離婚をしたか、離婚していないかは、「慰謝料を請求できるかどうか」という点では影響しませんが、実際に請求する際の「金額」に影響してきます。
実際に家庭が崩壊したか、それが離婚にまで至ったか、不倫相手の方が積極的に誘ってきたものかといった事情は、慰謝料の算定に影響するものですので、これらの事情がないからといって「慰謝料が請求できない」ということにはなりません。
不倫の慰謝料の相場
裁判例によれば、不倫による慰謝料はおよそ50万円から500万円くらいまでかなり幅があります。なかでも、200万円程度の事例が多いようです。
もっとも、個別の事案ごとの状況等から総合的に判断されるものですので、似たようなケースであっても、同じような金額になるものではありません。
慰謝料請求ができない場合
以下のような場合には、慰謝料請求をすることはできません。
- すでに婚姻関係が破綻しており(例えば別居中など)、単に籍が残っていただけの状態であったような場合
- 配偶者が結婚していることを隠して相手と付き合っており、相手も結婚している事実を知らなかった場合(かつ知らなかったことに過失がない場合)
不倫関係の立証の問題について
不倫をしている者双方が不倫の事実を認めているような場合には特段問題はありませんが、一方、または双方が不倫の事実を否認しているような場合、裁判では不倫を主張する者がその事実を立証しなければなりません。
立証の方法はさまざまなものが考えられますが、その「現場」そのものを押さえない限り立証ができないというものではありません。
場合によっては、探偵等に追跡を依頼し、証拠写真等をとりつけるケースもあります。
その探偵費用を賠償額に上乗せできるかどうかについては、裁判例上肯定されたケースも否定されたケースもあります。