【債権回収】法律相談1 債権の消滅時効について具体的に教えてください。
債権回収の実行では、消滅時効にご用心
債権回収をどうすればいいかお悩みの方は、債務者が約束を守ってくれないという問題を抱えていらっしゃるものと思います。
ただし、その権利が消滅時効にかかっているなどということはないか、注意が必要です。
債権とは、人(相手方)に対して給付(例えば金銭や物品等。)を請求できる権利のことをいいます。
債権の反対は債務ですね。債権・債務を、権利・義務といいかえると分かりやすいかもしれません。
債権が消滅する原因としてすぐに思いつくのはなんでしょうか。
債務の履行ですね。例えば、貸したお金を約束どおり返した、というように義務を完全に履行すれば権利が消滅するのは当然のことといえるでしょう。
一方、義務の履行が一切ないにも関わらず、債権者が漫然と何もせずにいたというだけで権利が消滅してしまう、「消滅時効」という制度が存在することはご存知でしょうか。
例えば、民法167条1項は、「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」と明記しているのです。民法のほかにも商法や手形小切手法などでも債権の消滅時効を定めた法律があります。
消滅時効による債権消滅を防ぐ手立てはあるのか。
前述した民法167条によれば債権は10年で消滅するとあるため、10年間の経過をもって自動的に権利は消滅してしまうと思われるかもしれません。
もっとも、消滅時効制度の趣旨は、あまりにも長い期間(民法167条では10年)債権者であるという地位にあぐらをかいて漫然何もしなかった者を保護するよりも権利行使がないことで安心している債務者の期待の方を優先しようとするものです。
そのため、債権者としてなすべき努力をきちんと行えば、時効期間の経過を中断させることができます。
債権者としてなすべき努力という点で思いつくとすれば、まずは「請求」ではないでしょうか。民法147条も時効は①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分③承認によって中断する、とちゃんと規定してあります。
ただし、ここで安心してはいけません。
民法147条にいう「請求」と認められるためには、単に電話やメールで請求したり、はがきや伝票など請求書類をおくるだけでは足りないのです。
時効を中断させるための具体的な方法
民法147条の「請求」と認められるためには、「裁判」を提起する必要があるのです。
これは容易なことではないかもしれません。しかし、請求書を送るだけで時効中断できると考えるのは大きな誤りですのでご注意ください。
裁判といってもいわゆる法廷闘争である「訴訟」が必須というわけではなく、支払督促や民事調停など、訴訟よりは穏当な手段もあります。
また、すぐに訴訟提起など裁判をするには準備が間に合わないという場合、ひとまず内容証明郵便の方法によって特定の債権について明確に請求する意思表示をすることにより、6か月の間だけいったん時効期間の経過をストップさせることができます。
ただし、内容証明郵便の方法による請求の場合、あくまで6か月の猶予という一時的な措置であること、そのためあとで裁判を起こさなければ結局は時効の完成を防ぐことができないこと、内容証明郵便の記載内容から、どの債権を請求しているのか明らかにして債権を十分に特定しておかなければ6か月猶予の効果が得られない危険があることに留意する必要があります。内容証明郵便を6か月ごとに送付すれば時効の完成をその都度延期できるものではなく、1回限りの猶予である点もご注意ください。
短期消滅時効について
債権は10年で消滅すると規定する民法167条をご紹介しましたが、ほかにも、民法では短期消滅時効という制度を定めていて、特定の種類の債権については10年よりも短い期間で消滅することまで規定しています。
たとえば、医師や工事に関する債権は3年で消滅時効となります(民法170条)。飲食や宿泊代金の債権にいたってはわずか1年で消滅時効となります(民法174条)。
商行為に関する債権は5年で消滅時効となりますが、こちらは商法522条で定められています。
なお、近い将来民法(債権法)が大改正をされるということが昨今話題となっているのですが、この民法改正においては、消滅時効期間が10年から5年に変更されるとか、短期消滅時効の制度がなくなるというように、大きく改正されることが予定されているようです。